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胃拡張の症例について紹介します

こんにちは。久しぶりの症例ブログの更新になります。

最近はめっきり寒くなり、コタツやヒーターの前から動かなくなるワンちゃんネコちゃんも多いのではないでしょうか。体調など崩しやすい時期になりますのでお気をつけください。

 

さて、今回は胃拡張で来院した体重24kgの大型犬のワンちゃんの紹介です。

この子は嘔吐と腹部膨満(お腹の張り)を主訴に来院されました。来院時には呼吸が早く、身体検査上では血圧も少し弱く感じられました。

 

レントゲン写真です。

ワンちゃんを横とバンザイにして撮った画像です。オレンジの矢印が胃のラインを表しています。

正常な子のレントゲン画像を見てみましょう。

レントゲンでは空気は黒く抜け、臓器などX線を通過しにくいものは白く写ります。

正常な子の胃の中にはご飯が入っているので白く写っています。今回の胃拡張のワンちゃんは胃の部分が黒く抜けているので空気が貯留していることが分かります。

 

胃拡張の原因は解明されておらず、ご飯や水を大量に摂取した後に激しい運動をすることや、胃の出口からの胃内容物流出障害、重度な呼吸困難や、疝痛による過度の嚥下が考えられています。

胃拡張の症状としては、流涎、吐き気、腹痛、腹部膨満、呼吸困難、脈拍の減弱などがあります。今回のワンちゃんも嘔吐と腹部膨満を主訴に来院されました。

 

また、胃拡張には「胃拡張になりやすい性質」というものがあり、気性が荒い、胸郭が深い、食後の激しい運動などが挙げられます。主に大型犬に多いとされていますが、小型犬や猫ちゃんにおいても起こり得る病態ではあります。

 

今回のワンちゃんは胃拡張のみでしたが、実は胃拡張と一緒に起こりやすいのが胃捻転です。胃捻転が起こると致死率はグンと上がります。

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胃捻転は胃の入り口から出口を長軸として時計回りに回転します。反時計回りは稀です。

胃が捻転してしまうとそれにつられて脾臓や十二指腸まで変位します。また、胃の拡張によって門脈や後大静脈が圧迫を受け、心臓に戻れない血液のうっ滞が起こります。血液のうっ滞が起こると、各細胞への酸素供給量の低下や心拍出量と血圧の低下、また血液の流速の低下と粘稠度の増加によって血が固まってしまい血栓を形成します。これにより、心臓では心筋虚血や低酸素による不整脈がおき、消化管での細胞の損傷や壊死は消化管内の細菌が血管を通して全身に回ることになり、細菌が出す毒素(エンドトキシン)により致死的な経過を辿りますので、迅速な処置や胃、脾臓、十二指腸の整復、壊死部の摘出手術が必要となってきます。

 

胃拡張や胃捻転には先ほど挙げさせていただいた「なりやすい性質」をなるべく避けることも大事です。大型犬の子は特にですが、ご飯を勢いよく食べさせないことや、ご飯を食べた後すぐにお散歩に行かないという些細な注意で胃拡張や胃捻転になる危険を少しでも下げることができるかもしません。

胃捻転の症状も、流涎、吐き気、腹痛、腹部膨満、呼吸困難など胃拡張と同じような症状がみられます。

今回のワンちゃんは、お腹に直接太い針を刺して胃の空気を抜き胃にかかる圧力を下げましました。胃内の空気が十分に抜けると、呼吸も落ち着き腹部の張りも無くなりました。心電図上も異常な波形等は見られず、血液検査でも大きな問題は見られなかったため、1日点滴をして次の日お家に帰りました。

今回のワンちゃんのように吐き気や腹部膨満など少しでもおかしいなことがあれば、お気軽に相談いただければと思います。

文:戸田裕子

 

 

 

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