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肺動脈狭窄症(生まれついての心臓病について)

今回は心臓病の症例について書かせていただきます。前回のブログの時は先天性心疾患という生まれながらの心臓病について書かせてもらいましたが、今回も先天性の心疾患についてのお話しようと思います。

前回は動脈管開存症(PDA)について書かせていただきました。昨年紹介した子とはまた別に動脈管開存症(PDA)のポメラニアン3ヶ月齢が今年も来院して、無事手術を終え現在も元気に過ごしております。動脈管開存症は手術にて治療可能な病気です。(写真、図)

 

今回お話をするのは先天性の病気ですが、また別の病気についてです。今回の病気は肺動脈狭窄症という病気です。心臓には肺動脈という血管があります。全身から帰ってきた使い終わった血液を心臓から肺へと送るための動脈です。その肺動脈の弁やその前後に、とても狭い部分がありそこで血液が通過しづらくなり、右側の部屋への血圧の負担がかかるという状態になります。(引用 イラストでみ る犬の病気)


 

動脈の一部が狭くなるとどうなるでしょうか。例えば、ホースの先端を指でつまむときをイメージして下さい。ホースを指でつまむと出口が狭くなって水が勢い良く出てきます。そしてホースをそのままにした時よりも遠くまで水が飛ぶようになるのがわかると思います。そしてさらにつまむと蛇口の部分には水圧がたくさんかかります。蛇口の部分が心臓、ホースが肺動脈と思っていただくと分かりやすいかと思います。蛇口である心臓には血圧の負担が大きくかかってくることになります。肺動脈が狭いということで超音波検査を行うと肺動脈を流れる血液の流れが通常の速度の数倍になります。重症では5倍程度にもなってくることもあります。(上図が正常な犬、下図が肺動脈狭窄の症例)


 

病気の症状としては、軽度から中程度の狭窄(狭さの重症度)ではほとんど症状はないです。しかし重度になると、突然に倒れたり、運動後に疲れやすかったり等の症状が現れ、突然死する可能性がある、極端に悪くなる病気です。また突然死等がなくともそのまま重度の状況が続くと心臓には負担がかかるため、最終的には心不全の症状を起こすようになる動物もいます。(腹水や浮腫)

今回の症例は、肺動脈を流れる血流速度が通常の5倍以上である重症のワンちゃんだったため、大学病院にてカテーテルを用いた手術を行いました。無事手術を終えて現在は血液の速度が半分程度(血圧は1/3程度)に低下しました。どんな手術を今回行ったかというと、バルーンカテーテルという風船が先端に付いたカテーテルを使って、肺動脈の狭い場所を拡張させる手術になります。この手術は適応を見極めるのが難しく、手術中の危険性もある手術ですが、突然死のリスクを減らし進行を抑えることができる非常に良い方法と言われています。

前回同様の文章の終わり方になりますが、ワクチン接種時に心臓に異常な音があると言われてしまった方は、是非相談いただければと思います。この記事を読んでワンちゃんネコちゃんにも生まれつきの心臓病があり、また治療により良好な状態にできるかもしれないということをたくさんの方に知っていただければ幸いです。

文:井口和人 (日本獣医循環器学会専門認定医)


 

 

 

 

 

 

 

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