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甲状腺癌を摘出したワンちゃんを紹介します。

近頃、朝晩と冷え込む日が増えてきましたが、皆様おうちのワンちゃんやネコちゃん達といかがお過ごしでしょうか。風邪など引かないように気をつけてくださいね。

さて、今回は手術により甲状腺癌を摘出したワンちゃんを紹介します。

(手術の様子の写真を使用しておりますので、苦手な方はご注意下さい。)

 

まずはじめに甲状腺について簡単に説明します。

下の図1,2の様に、甲状腺は喉の少し下に気管をまたいで一対で位置しており、体の新陳代謝を維持するのに必要なホルモンを作る臓器です。

図1                            図2

(図1、2ともに講談社イラストで見る犬の病気より一部抜粋)

 

甲状腺癌はこの組織が癌化してしまっている状態です。

今回紹介する症例は12歳、避妊済み女の子のウェルシュコ-ギ-です。

図3

少し前から首の右側に直径5㎝位のしこりがあることに気付き、だんだん大きくなってきているという主訴で当院を受診されました。何度か吐いたり、ごはんを飲み込みづらそうにしていることもあったそうです。

これに対していくつかの検査を実施しました。

図4超音波画像

 

血液検査で大きな異常は認められませんでした。

レントゲン検査では、体の他の部位(特に肺)へ既に転移していないかを調べるのですが、今回は大きな異常は認められませんでした。

超音波検査では、図4の写真に示すように約4センチの塊が認められました。

甲状腺ホルモン検査は甲状腺が作るホルモンの血液中に含まれる量を測定し、甲状腺の機能を調べる検査ですが、こちらも異常はありませんでした。

また、しこりの部分に針を刺してどんな細胞で構成されているかを調べたところ、癌の可能性があり、飼い主様と話し合った上で手術にてしこりを摘出することとなりました。

図5

図5は手術直前の首のしこりの写真です。メスを入れる前に十分に消毒します。

 

図6

周囲の血管をしっかりと結紮し、電気メス等を用いて出血を最小限に抑えながらしこりの本体を切り離していきます。

図7

図7は摘出したしこりの写真です。この組織は病理検査に提出して悪性なのか良性なのか、またその結果をふまえて今後どういった治療を行うべきかを判断します。

病理検査の結果は、甲状腺癌でした。甲状腺癌は再発や体の他の部分への転移もしやすく、悪性度の高い腫瘍です。手術で完全に摘出できてもその後の慎重な経過観察が重要になります。

今回のこの腫瘍も周囲の組織へ既に拡がり始めており、今後再発・転移する可能性を考慮して抗癌剤による治療を行うこととなりました。抗癌剤治療は副作用が強い、体に負担がかかるといったネガティブなイメージを持たれがちですが、定期的に血液検査等を行うことによって身体の状態を観察することで副作用の発現を極力抑えることもできます。また、さまざまな薬剤投与プランがあり飼い主様とよく相談した上、患者さんにとって最適なプランを選択していきます。

現在、体の健康状態に応じて3~4週間に一度抗癌剤を投与していますが再発、転移もなく副作用も軽く全身状態は非常に良好に経過しています。

 

甲状腺癌を疑う主な症状は、声がかすれる、食べ物を飲み込みづらそう、吐き戻す事が多い、呼吸しづらそう、喉の下あたりが腫れているといった事が多いです。

人の医療でも悪性腫瘍(ガン)に対する治療は非常に大きな課題となっていますがワンちゃんネコちゃん達でも高齢化が進み悪性腫瘍による死亡率が高くなっています。悪性腫瘍といっても様々ありますが、やはり早期発見することがより良い結果に繋がります。今回の患者さんは、飼い主様が「首に少し前からあるしこりが大きくなってきた」と気づかれた事からガンであることが判明しました。ワンちゃんやネコちゃんは人間のようにどこが痛い、気分が悪いなど自分で説明ができません。そこで役に立つのが飼い主様とのスキンシップです。日頃体を撫でてあげたり、元気食欲や便など全身状態の観察をしっかりしてあげることで体の異変により早く気づいてあげられます。一見元気が良くても、その裏に悪性腫瘍が隠れていることもあります。ワンちゃんやネコちゃんにとっての1年は人で考えると4年位に相当すると言われています。血液検査、レントゲン検査、超音波検査等の検診で腫瘍を発見できることもあるので、特に中~高齢になってきたら年に一度は健康診断に連れて行って体に異常がないかを調べるとよいでしょう。

執筆担当 赤司

 

 

 

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