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膝蓋骨内方脱臼についてご紹介します。

こんにちは。これから夏本番なので、ペットを家に残すときには冷房をつけ水分を十分に置いておくなどの熱中症対策をしていきましょう。

さて、今回は犬に多い病気、膝蓋骨内方脱臼について紹介したいと思います。

膝蓋骨とは人でいう膝のお皿のことで、膝の曲げ伸ばしをスムーズにする骨です。通常は膝の溝(滑車溝)にはまってそこを上下しているのですが、何らかの原因で骨が溝から外れてしまうことを、膝蓋骨脱臼といいます。トイプードルやチワワ、ヨークシャテリアなどの超小型犬種に多く、内側に脱臼する膝蓋骨内方脱臼がほとんどです。超小型犬種の多くは、先天的に大腿骨の捻じれや曲がりがあり、膝の溝も浅いため脱臼しやすいと考えられています。脱臼することで脛骨も変位してしまうことがあります。

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脱臼するとそれだけで違和感があったり、溝ではない所で膝蓋骨が上下することで痛みが出ます。症状としては、足を後ろに伸ばす、座った時に足を投げ出す、ジャンプしたがらなくなるといった軽度なものから、足を挙げてしまう、足を曲げたまま歩くといった重度なものまで様々です。
膝蓋骨内方脱臼には重症度があり、脱臼の程度と変形度によって分類されています(Singletonの分類)。

  • グレード1:時々脱臼することがあり、痛がることがある。膝関節を伸ばした状態で、手で操作すると膝蓋骨が簡単に脱臼するが、手を離すと元に戻る。
  • グレード2:グレード1よりも頻繁に脱臼する。膝蓋骨は、特に膝蓋骨を押しながら足を回転させると簡単に脱臼し、逆回転させるとすぐに戻る。
  • グレード3:膝蓋骨が常に脱臼し、膝関節を少し曲げたまま肢を使う。膝蓋骨は用手で戻せるが、手を離すとすぐに脱臼してしまう。
  • グレード4:膝蓋骨が脱臼したままの状態で成長し、大腿骨の変形や脛骨の変位を伴う。用手にて膝蓋骨を戻すことができない。膝関節は曲げたままか、挙げてしまう。

グレード1~2で症状がほとんどない場合、すぐに手術とはならず運動制限や体重制限、サプリメント等で維持が可能です。しかし、普段は症状がなくても加齢や体重増加、過度な運動によって靭帯や半月板が損傷したり(膝蓋骨脱臼があると損傷しやすくなります)、脱臼が悪化することで痛みが出ることがあり、その場合には手術が必要となります。グレード3~4の場合、その後悪化していく可能性が高いため手術が適応となります。
成長期で脱臼がある場合はグレード2でも要注意で、そのまま成犬になった時に骨が変形し、筋肉が硬縮してしまい足を使えなくなってしまうことがあるため、成長が終わる前に手術することもあります。

今回紹介する症例は1歳2ヶ月2kgのヨークシャテリアで、他院にて膝蓋骨脱臼の可能性があると指摘され来院されました。来院時の症状はすぐに座り込んでしまうというものだけでした。重症度は右の膝が膝蓋骨内方脱臼グレード3、左がグレード4でした。左の膝はかなり重度に脱臼しており、大腿骨が捻じれているのが分かります。同時に脛骨も変位していました。右は骨の変形は左に比べればひどくないですが、膝蓋骨は常に脱臼している状態でした。

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このまま放って置くと筋肉が徐々に硬縮し歩けなくなる可能性が高く、そうなってから手術を行っても関節炎による痛みが残ったり、筋肉が固まって膝蓋骨の整復が困難になるため、現時点で手術を行ったほうが良いと考え、飼い主さんと相談の上手術を行いました。
手術で右の膝(グレード3)を開けると、大腿骨の溝が浅く、同時に脛骨も内側に変位していました。そこで、溝を深く削り、脛骨を一部骨きりし外側に持っていきピンで止めるという術式を行いました。

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